
2024-08-20
インタビュー
オープンでフェアでリベラルな社会へ、ビジネスで資本主義の課題に向き合う
エンジェル投資家 荻原国啓さん
Startup Next編集部がお届けする、今をときめく!投資家インタビュー。志を持って活動される投資家のみなさんのバックグラウンドや考え方に、一歩踏み込んでご紹介しています。今回は、エンジェル投資家の荻原国啓さんにお話を聞きました。
荻原国啓
ゼロトゥワン 代表取締役社長、ピースマインド 創業者・元代表取締役社長
慶應義塾大学経済学部卒。大学在学中より人事アセスメント会社新規事業開発や新卒人材紹介事業等の複数のスタートアップを経験。 メジャーリーグベースボール選手会公認エージェントのTAK佐藤氏との出会いをきっかけに、個人・組織のメンタル面のサポートの重要性を感じ、1998年にソーシャルベンチャーの(株)ピースマインドを創業。人と組織の「はたらくをよくする」メンタルヘルス支援プログラムを上場企業を中心に1,400社に提供するアジア有数の企業に成長。2016年ゼロトゥワン設立。社会インパクトある起業家輩出のために、スタートアップ企業・起業家へのインキュベーション、投資、経営支援事業を展開。複雑性の高い経営課題に向き合う伴走支援家として成長企業・組織へのアドバイザリーに従事。2018年一般社団法人ソーシャルアントレプレナーズアソシエーション(SEA)を社会起業家メンバーと設立、共同代表理事。投資条件がわかる!投資家プロフィールはこちら👇(顔写真をクリックするとプロフィールを閲覧できます。)
まずは、荻原さんについて教えてください!
ゼロトゥワン代表の荻原です。
学生時代に「事業を通じて社会に貢献し、何らかの足跡を残す人生にする」ことだけは決めていました。そう決めたきっかけはおそらく2つあります。1つ目は昔から教科書より偉人伝ばかり読む子どもだったこと。エジソンがいなかったら世界は大きく変わっていただろうなとか、明治維新を作った人って20代じゃん!自分も早く何かやらなきゃ!などとワクワク考えていました。
もう1つは親の影響です。総合商社に勤める父は激務を厭わない典型的な日本の企業戦士で、幼少期は大変さだけが伝わって来ました。そんな父の後ろ姿を見て、リスペクトはありつつ、自分は雇われる生き方ではないほうがいいなと自然と思うようになりました。一方でフリーランスでイラストを描いている母の仕事の方が楽しそうに見え、自分の未来としてイメージしやすかった記憶があります。
近しい価値観を持つ双子の兄とともに「起業する」と親に伝えたとき、多少は小言を言われましたが、決めた後の報告だったのであまり足枷になった記憶はないですね。ディスカッションになったら負けるので、行動で示してしまうのが良いという判断でした(笑)
親ブロックはないわけではありませんでしたが、正解は誰にもわからない世の中ですし、「やっときゃよかった」と後悔するのが一番嫌だったんです。
起業のテーマを定めたのは、MLB(メジャーリーグベースボール)選手会公認エージェントのTAK佐藤さんとの出会いがきっかけでした。佐藤さんから「フィジカルの鍛錬以上に、メンタルの調整が大切」だと聞き、メンタルヘルスマネジメントはスポーツ選手だけではなくあらゆる個人、あらゆる会社組織に必要でありながら、日本が軽視してきた分野だと強く感じるようになりました。
そして、1998年に個人・組織のメンタル面をサポートするピースマインドを創業しました。当然、初めからうまくいったわけではなく、ひたすら頭をひねってずっとお金のない戦い方をしていたような気がします。
それでもなんとか、人と組織の「はたらくをよくする」メンタルヘルス支援プログラムを上場企業を中心に1,400社を超える組織へ提供するアジア有数の企業に成長しました。18年ほど社長をやる中で、ストレスチェックの義務化やハラスメント対策の義務化に寄与するなど一定の社会の変化を感じることができたことは、今でも心底嬉しいです。
ただ、当時はこのまま社長の神輿に乗ってていいのかという葛藤と、「自分がやってきたことを生かして、もっと様々な社会テーマに対する事業の立ち上げや成長プロセスに関わることをやってみたい」という僕の好奇心やエゴもあり、兄に会社を任せ、スタートアップ企業・起業家へのインキュベーション、投資、経営支援事業を展開するゼロトゥワンを2016年に設立しました。
兄は「国啓は0→1が好きだもんね」と理解を示してくれました。創業時からずっと、切込隊長は僕で、品質を高めたり組織を大きくしていくのは彼の得意分野だったんです。
2018年には一般社団法人ソーシャルアントレプレナーズアソシエーション(SEA)を社会起業家メンバーと設立し、共同代表理事をしています。また、ライフワークとして、長年業種業界問わず多くの起業家や経営者のメンター・エンジェルとしても活動しています。
荻原さんが投資家になったきっかけは何ですか?
エンジェル投資は、ピースマインド代表時代から細々とやっていました。僕自身、学生ベンチャーで特段人的なネットワークや経営ノウハウもなく苦労した経験があるので、学生や若い起業家からの相談を受けることが度々あったんです。その結果、出資に至るケースもありました。
本格的にエンジェル投資を始めたのはピースマインドを離れてからです。出会い方としては、やはり紹介が多いですね。特に既存投資先の起業家からご紹介いただくことが多く、自分から探しに行くことはあまりありません。紹介以外だと、ご連絡をいただきピッチ資料を送ってもらい、検討し出資に至ることもあります。
現在はどんなところに投資していて、投資先とはどんな関係ですか?
社会の何らかの負の解決を目指していたり、社会をより良い方向にアップデートしようとしている、いわゆる社会的企業に多く出資しています。
特に行き過ぎた資本主義社会に疑問を感じながらも、ビジネスで資本主義のアップデートに切り込もうとするスタートアップが好きなんですよね。いくつかキーワードを挙げるとするなら、ポスト資本主義、人的資本経営、ウェルビーイング、メンタルヘルス、SDGs、教育格差解消、D&I、ニューノーマル、シェアリングエコノミー、など。こういった社会テーマにテクノロジーやAIを活用していく事業に関心があります。
新しい衣食住の在り方を提案してくれるサービスもとても良いですね。例えば投資先にはサステナブルなインクルーシブファッションや、首都圏の不本意な食生活をよくするために地方の農業とつなぐサービス、住まいのサブスクサービス、地方へ旅をしながら働き関係人口を創出するサービスなどがあります。「未来がこうなったらいいな」と思い描き、ビジネスという形で具現化していくプロセスはすごく魅力的でワクワクします。
僕は社会がよりオープンに、よりリベラルになってほしいと願っているので、そのアプローチとなるようなスタートアップには興味を示しがちだと思います。
また、初期であればあるほど僕の価値が出せると思っているので、フェーズはシード投資が中心です。シリーズA以降やPMFした後に投資する人はたくさんいるでしょうから、何がわからないのかわからない時期からサポートするのが自分の役割だと思っています。チケットサイズは50万円〜1,000万円ほどが多いです。
まとめると、僕自身は下図の右上にあたる「社会性と起業のスキルを両立させた起業家出身の投資家・経営伴走家」だと思っているので、僕が役に立てそうだなテーマや起業家だな、と感じたら出資するようにしています。

投資先との関わり方は、僕が必要になるフェーズがそれぞれ違うので、スタートアップによってバラバラです。いわゆるハンズイフです。すごく困ったときだけ連絡をくれる出資先もあれば、ご飯に行く出資先、株主が増えた後で公の場で言えない困り事を相談してくれる出資先など本当に様々です。
ちなみに、出資先にはsmartroundの活用を必ず勧めています!数字の報告のために月次でミーティングを設けるより、smartroundに数字やデータや資料を入れておいてもらえばこちらのタイミングで確認できるので、双方にとって良いからです。
魅力を感じる起業家はどのような人ですか?
魅力を感じる起業家の特徴は2つあります。
1つ目は、事業に社会性があり、そこになんらかの熱い想いや当事者意識を持っていることですね。社会課題は得てして解決までのハードルが高いものですが、自分で責任を背負い、高い理想と志を持ち続けられる人は大変魅力的です。
厳しい現実との葛藤を乗り越え、それまでと違う景色が見えるようになり、人間として成長していく姿を見るのは毎回感慨深いものがあります。
2つ目は、起業家としての柔軟性と執着のバランスを兼ね備えた資質を持っていることです。具体的には、何か助言させてもらったときに即実行できる柔軟性や行動力がある一方で、執着やエゴもしっかり持っていること。こだわりすぎてしまうと人の話を聞かなくなるので、バランスがとれている起業家はすごいなと思います。そういう人は応援者がつきやすいですよね。
今後の展望をお聞かせください!
スタートアップを支援する社会起業家であり続けたいです。抽象的に聞こえるかもしれませんが、僕は社会がもっとオープンでフェアでリベラルであってほしいと思っているので、同じ志を持つ起業家と一緒に現実を見て、変えられることからどんどん変えていきたいです。
例えば、スタートアップエコシステムのジェンダーバランスを半々にしたいと思っているので、投資先のジェンダーバランスをかなり注視していますが、これは男性側の意識を変えないといけない課題だと感じます。
現状、シリコンバレーもホモソーシャルですし、スタートアップエコシステムには男子校的なカルチャーがありますし、資本主義がそもそもマッチョですよね。断言しますがこれは大変偏っています。僕自身も、自分の生きてきた社会がいかにワンサイドで、バイアスの中に生きてきたということを投資活動を通して様々な方の話を聞いて日々痛感していますが、偏っているという前提に気づくところから始めなければいけません。
なぜ偏っていることが問題かと言えば、ジェンダーに限りませんが、マイノリティ側の意見は強者によって軽視されがちだからです。でも社会を変えるのはマイノリティなので、僕はマイノリティの味方でいたいんです。そして、スタートアップの成長って「マイノリティがマジョリティになってくプロセス」じゃないですか。社会起業家・投資家として、資本主義を否定せずにこのアンフェアに向き合っていきたいと思っています。
こういった思いが核としてあるのは、もしかしたら「”双子”とまとめられること」に対してどこか憤り、「1人ひとりが尊重されるべきだ」と感じていた原体験のおかげかもしれません。
スタートアップ起業家へのメッセージをお願いします!
最も伝えたいのは、「今の完成度を気にせず行動してほしい」ということです。投資家とコミュニケーションするとき、そのタイミングで事業プランが成熟しているかどうかは正直あまり関係ありません。その人が本当にやりたいテーマであれば内容はいくらでも変わりますし、創意工夫によってより市況に合ったものに成熟していくものです。
その延長で、「2-3年前にボコボコにされたからもうあの投資家とは話したくない!」と機会を絶ってしまうのはもったいないと感じています。僕自身も起業家時代は「一度断られた相手には会いづらいな」と思っていたので、気持ちはとてもよくわかりますが、投資家側は、それまでのコミュニケーションがどうであれまた声をかけてほしいと思っていると思うので、僕含め、ぜひ気軽に声をかけてください。
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